「人の言うことを聞くべからず」+

坂本晶と申します。はてなでは「坂本晶の『人の言うことを聞くべからず』」をやっています。こちらはサブブログとして、古代史、神話を中心に扱っていきます。『水瓶座の女』という小説を、太陽出版から販売しております。読んで頂けたら嬉しいです。

ヤマトタケルは開化天皇である(74)~松浦の佐用姫伝説に見る「主嶋」と百済の「倉下」

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今回は、「松浦の佐用姫」の伝承である。まずは『肥前国風土記』から。

鏡の渡 郡役所の北にある。

昔、檜隈の廬入野の宮に天の下を治められた武少広国押楯(宣化天皇)のみ世に、大伴の狭手彦連を派遣して、任那の国を鎮めさせ、かたがた百済の国を救援させ給うた。狭手彦は命を奉じてこの村まできて、篠原の村《篠はシノという》の弟日姫子を妻問いして結婚した。《日下部君らの祖である。》この姫は顔かたちは端正で美しく、人の世にすぐれた絶世の美人であった。別離の日になると、〔狭手彦は〕鏡を取り出して愛人に渡した。女は悲しみ泣きながら栗川を渡ると、贈られた鏡の緒が断れて落ち、川の中に沈んだ。そのことによってここを鏡の渡(渡し場)と名づける。

褶(ひれ)振の峰 郡役所の東にある。烽(とぶひ)のある場所の名を褶振の峰という。

大伴の狭手彦連が船出して任那に渡った時、弟日姫子はここに登って褶(肩布)をもって振りながら別れを惜しんだ。そのことによって名付けて褶振の峰という。


さて弟日姫子が狭手彦連と別れて五日たった後、ひとりの人があって、世ごとにきて女(弟日姫子)とともに寝、暁になると早く帰った。顔かたちが狭手彦に似ていた。女はそれを不思議に思ってじっとしていることができず、ひそかにつむいだ麻〔の糸〕をもってその人の衣服の裾につなぎ、麻のまにまに尋ねて行くと、この峰の沼のほとりに来て寝ている蛇があった。身は人で沼の底に沈み、頭は蛇で沼の底に臥していた。たちまちに人と化為(な)って歌っていった。

篠原の弟姫の子ぞ

さ一夜も率寝てむ時や

家にくださむ

(篠原の弟姫子よ

一夜さ寝た時に

家に下し帰そうよ)

その時弟日姫子の侍女が走って親族の人たちに告げたので、親族の人はたくさんの人たちを連れて登って見たが、蛇と弟日姫子はともに亡せてしまっていなかった。そこでその沼の底を見るとただ人の屍だけがあった。みんなはこれは弟日姫子の遺骸だといって、やがてこの峰の南のところに墓を作って納めて置いた。その墓は現在もある。

 

以上が『肥前国風土記』の内容で、松浦の佐用姫は弟日姫子という名前になっている。
松浦の佐用姫の伝承の初出といっていいが、私の勘違いで、肝心の部分が入っていない。仕方がないので、ウィキペディアを見てみよう。

松浦佐用姫 - Wikipedia

ウィキペディアによると、佐用姫は大伴狭手彦と別れた後、加部島に渡って石になったとある。
しかしこれが文献資料によるものかがわからない。口伝えの伝承などでは、暗号が使えないので判断ができない。『万葉集』にも佐用姫の伝説が書かれているというが、加部島に渡って石になったと書いてあるかまでは見ていないためわからない。
ただ、ここで加部島が出た。加部島は、前回、前々回の嶹王が生まれた各羅嶋(加唐島)の隣の島である。そして加部島が、私がヤマトタケル=開化の出生地である「主嶋」の最有力候補だと思っている地である。
『書紀』の雄略二十年を見てみよう。

二十年の冬に、高麗の王、大きに軍兵を発して、伐ちて百済を尽(ほろぼ)す。爰(ここ)に小計(すこしばかり)の遺衆有りて、倉下(へすおと)に聚み居り。兵粮既に尽きて、憂泣(いさ)つること茲(ここ)に深し。是に、高麗の諸の将、王に言して曰さく、「百済の心許、非常(おもひのほかにあや)し。臣、見る毎に、覚えず自らに失(まど)ふ。恐るらくは更蔓生(またうまは)りなむか。請はくは逐ひ除(はら)はむ」とまうす。王の曰はく、よくもあらず。寡人(おのれ)聞く、百済国は日本国の宮家として、由来遠久し。又其の王、入りて天皇に仕す。四隣の共に識る所なり。といふ。遂に止む。百済記に云はく、蓋鹵王の乙卯年の冬に、狛の大軍、来りて、大城を攻むること七日七夜、王城降陥れて、遂に尉礼を失ふ。国王及び大后・王子等、皆敵の手に没ぬといふ。

 

「倉下」を「へすおと」と読んでいるが、なぜ「へすおと」と読んだのだろう。『書紀』には読み方が書いてある場合があるが、ここにはない。
「倉下」は「へすおと」ではなく「くらじ」ではないか?
百済記に云はく」と注があり、大筋はそれになぞっているが、「倉下」に僅かの兵が集まったとは『百済記』には書いていない。つまり「倉下」に人が集まったというのは嘘である。
次回、この後百済がどうなったのか見てみよう。

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