「人の言うことを聞くべからず」+

坂本晶と申します。はてなでは「坂本晶の『人の言うことを聞くべからず』」をやっています。こちらはサブブログとして、古代史、神話を中心に扱っていきます。『水瓶座の女』という小説を、太陽出版から販売しております。読んで頂けたら嬉しいです。

ヤマトタケルは開化天皇である(56)~「忍」と「押」と「弉」

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古事記仁徳天皇の条の后妃子女の記述には、履中天皇は大江之伊耶本和気命とあり、その後「かれ、伊耶本和気命は天の下治らしめしき。」とある。
この場合、「之」が何を否定しているかが重要である。
「和気」を否定しているなら、大江之伊耶本和気命は丹波系である。しかし「大江」を否定しているなら出雲系ということになる。
どちらなのか、『古事記』の仁徳天皇の条を見ていこう。

ヤマトタケルは開化天皇である(33)~磐之姫の正体 - 「人の言うことを聞くべからず」+

の後のエピソードに、雁の卵の瑞祥の話と枯野という船の話がある。
「雁の卵の瑞祥」の話は、仁徳が日女島行幸した時に、雁が卵を生んだ。仁徳は健内宿禰に「大和国に雁が卵を生むと聞いたことがあるかと尋ね、健内宿禰は「聞いたことがございませんと答えたという話である。
「枯野という船」の話は、兔寸河の西に高樹があり、朝日に当たればその影は淡路島に及び、夕日に当たればその影は高安山を越えたという。その樹を切って造った船に枯野と名付けた。その船が壊れるとその木材で塩を焼き、焼け残った木で琴を作ると、その音色は七つの村里に響き渡ったという。
この二つのエピソードの詳細な研究はまだしていないが、その前の石之日売のエピソードが仁徳と石之日売が真に「結婚」したことを意味し、「雁の卵」と「枯野」が二人の子を意味すると見ている。

次に履中天皇の条では、

子、伊耶本和気王、伊波礼の若桜宮に坐して天の下治らしめしき。この天皇、葛城の曾都比古の子葦田宿禰の女、名は黒比売命を娶生みましし御子、市辺の忍歯王、次に御馬王、次に青海老女、亦の名は飯豊老女 三柱

とある。
伊耶本和気「王」は伊耶本和気「命」と同じなのだろうか。
この問題は後回しにしよう。
市辺の忍歯王の「の」は「之」である。ならばどれかの字を否定している可能性がある。
否定されているのは「忍」である。
欠史八代の一人、第五代孝昭天皇の条に、

この天皇尾張連の祖奥津余曾の妹、名は余曾多本毘売命を娶して生みましし御子、天押帯日子命、次に大倭帯日子国押人命。二柱。かれ、弟帯日子国忍人命は天の下治らしめしき。

とある。この文で「押」と「忍」が対比されており、それぞれどちらかが丹波、出雲を表す字だとわかる。

ヤマトタケルは開化天皇である(49)~仁徳朝は虚構である(追記あり) - 「人の言うことを聞くべからず」+

丹波系である若野毛二俣王の娘は忍坂「之」大中津比売命であり、「之」が「忍」を否定している。

ヤマトタケルは開化天皇である(55)~「別」と「和気」 - 「人の言うことを聞くべからず」+

では践坂大中比弥王とあり、「忍」の字を使っていないことから、「忍」が出雲系を表す字だとわかる。
そして雄略天皇に殺されたのは、忍歯王となっている。
その後、
「市辺王の王子達、意祁王、袁祁王 二柱、この乱れを聞きて逃げ去りたまひき。」とあるので、意祁王、袁祁王は「市辺王」の子であり、「忍歯王」の子ではない。
なお、

ヤマトタケルは開化天皇である(24)~飯豊皇女は三人いる - 「人の言うことを聞くべからず」+

の市辺忍歯別王は市辺之忍歯王と同じ丹波系の人物となり、ここで訂正しておく。
次に顕宗天皇の条を見てみよう。

伊弉本別王の御子、市辺忍歯王の御子、袁祁の石巣別命、近つ飛鳥宮に坐して、天の下治らしめすこと捌(や)歳なり。

とある。「袁祁の石巣別命」
とは誰のことだろうか。
伊弉本別王が祖父で、「別」の字があるから丹波系かと思えば、父親が市辺忍歯王だから伊「弉」本別王は出雲系の人物である。
「弉」は丹波系の字であり、それが「別」によって否定されている。
ならば「袁祁の石巣別命」はどうだろうか。
「石巣別」とは、

ヤマトタケルは開化天皇である(50)~「速」「別」は否定の意味 - 「人の言うことを聞くべからず」+

の神生み神話で紹介した石巣比売の近親婚配偶者の否定であり、「袁祁の」は「袁祁」の否定で袁祁王とは別の出雲の人物であることを示している。
それでは「弉」が出雲系なら、「耶」は何か?
それを探るために、次回、仁徳天皇を見た後に、もう一度顕宗天皇を見ていこう。


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