「人の言うことを聞くべからず」+

坂本晶と申します。はてなでは「坂本晶の『人の言うことを聞くべからず』」をやっています。こちらはサブブログとして、古代史、神話を中心に扱っていきます。『水瓶座の女』という小説を、太陽出版から販売しております。読んで頂けたら嬉しいです。

ヤマトタケルは開化天皇である(54)~「迦」と「訶」、健は出雲系

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古事記景行天皇の条の后妃子女の記述には、

また倭健命の曾孫、名は須売伊呂大中日子の女、訶具漏比売を娶して生みましし御子、大枝王。

 

とある。
もう一度、ヤマトタケルの系譜を見ていこう。

かれ、上に云ひし若建(ヤマトタケルの子)、若建王、飯野真黒比売を娶して生みましし子、須売伊呂大中日子王。この王、淡海の柴野入杵の女、柴野比売を娶して生みましし子、迦具漏比売命。かれ、大帯日子天皇景行天皇)、この迦具漏比売を娶して生みましし子、大江王。この王、庶妹(ままいも)銀王(しろがねのみこ)を娶して生みましし子、大名方王、次に大中比売命。かれ、この大中比売命は、香坂王、忍熊王の御祖(みおや)なり

 

とあり、訶具漏比売が「迦」具漏比売に、大枝王が大「江」王になっている。
これは意富夜麻登久邇阿礼比売命が意富夜麻登「玖」邇亜礼比売命に、伊玖米入日子伊沙知命が伊「久」米伊理毘古伊「佐」知の命になったように、名前の字を変えて丹波系から出雲系へ、出雲系から丹波系へと変えているのである。
このことから、字を変えて人物の属性を変えた場合、最初に表記された文字がその人物の本来の属性を現している可能性が高い。それは御真木入日子印恵命である崇神天皇のの子が、伊玖米入日子伊沙知命であることからも蓋然性が高いと思われる。
ならば訶具漏比売と「迦」具漏比売の「訶」と「迦」がどちらが丹波で出雲系なのかだが、「迦」は垂任天皇の妃の迦具夜比売の「迦」で、私は「迦」が丹波系、「訶」が出雲系を表すと考えている。
ただそうなると問題が生じてくる。
天地初発に登場する宇麻志阿斯訶備比古遅神は別天つ神なのに「訶」の字がある。
これについては、「次に国稚く浮ける脂の如くして、海月なす漂える時、葦牙の如く萌え騰る物によりて成りし神の名は」宇麻志阿斯訶備比古遅神とあり、「葦牙の如く萌え騰る物」が丹波系の神を表すと考えている。
また大年神の配偶神に天知迦流美豆比売がいるが、この神は「天」という出雲系の字が入っているのに、「迦」という丹波系の字がある。
この神については、「迦」が否定を表すと考えれば一応解決しそうだが、他に「迦」が否定を表す例が無いので現時点で結論づけることはできない。今後の課題としよう。

また倭健命、若健命などの「健」も、以上の理由から出雲系を表すと考えられる。
「健」が出雲系を表す字と見るのは、健内宿禰が出雲系だと考える私の見解と合致する。
また、スサノオについても言えることがある。
古事記』でのスサノオの表記は、健速須佐之男命、速須佐之男命、須佐之男命の三つである。
健速須佐之男命は「速」が「健」を、「之」が丹波系を表す「佐」を否定している。この場合、丹波、出雲の判別ができない。
このような名前になるのは、伊邪那岐命ならぬ伊邪那伎命が、黄泉津大神である伊邪那美命の穢れを禊して生まれた神だからである。
しかし速須佐之男命は、「之」が「佐」を否定しても、「速」が丹波系を表すので丹波系である。『古事記』活躍するのは大体この速須佐之男命である。
そして須佐之男命の場合、これは明確に出雲系である。

履中天皇の話をする前にもうひとつ、次回、「別」と「和気」の話をしよう。