「人の言うことを聞くべからず」+

坂本晶と申します。はてなでは「坂本晶の『人の言うことを聞くべからず』」をやっています。こちらはサブブログとして、古代史、神話を中心に扱っていきます。『水瓶座の女』という小説を、太陽出版から販売しております。読んで頂けたら嬉しいです。

ヤマトタケルは開化天皇である(52)丹波系は国つ神

シリーズ第一回目から読みたい方はコチラ↓

sakamotoakiraf.hateblo.jp

大町阿礼さん
前回述べた誉田陵ですが、『古事記』には「御陵は川内の恵賀の裳伏崗にあり」とありますが、『書紀』には応神天皇の埋葬記事が一切ありません。したがって『書紀』の誉田陵は『古事記』の応神天皇陵ではありません。『書紀』の誉田陵は「いちびこの丘」にあります。私はその誉田陵は、誉田山御陵古墳の周辺にあると思っています。
またこの話は、『書紀』の仁徳天皇の話とも共通していると思います。
仁徳十一年、茨田の堤を築こうとしたが築いても壊れる所が二ヶ所あった。天皇の夢に神が現れ、「武蔵の強頸と河内の茨田連衫子を河伯(かわのかみ)に奉れば防ぐことができる」と言った。そこで二人ヲ人身御供にしたが、強頸が泣いて水に入ったのに対し、茨田連衫子は瓢二つを取り、「もしこの瓢を沈めることが出来れば、水の中に入ろう」と言ったが、河伯は瓢を沈めることができず、衫子は無事だった。
仁徳六十七年にも、似たような話があります。吉備の中国の川島河の川股に、竜がいて人を苦しめていたのを、笠臣の先祖の県守が瓢を三つ水に入れ沈められなかった竜を斬ったという話です。河伯が田辺史伯孫に、竜が史首加竜に対応しているのではないかと思います。

本題に入ろう。
前回丹波系は天神ではないのではないかという話をしたが、『古事記』では、アシナズチは「僕(あ)は国つ神大山津見神の子なり」と言う。大山津見神はイザナキ、イザナミの子である。
また、サルタビコは「僕は国つ神、名は猿田毘古神なり」と言う。
天地初発を見てみよう。


天地初めて発けし時、高天原に成りし神の名は、天之御中主神、次に高御産巣日神次に神産巣日神。この三柱の神は、みな独神と成りまして、身を隠したまひき。
次に国稚く浮ける脂の如くして、海月(くらげ)なす漂へる時、葦牙(あしかび)の如く萌え騰る物によりて成りし神の名は、宇摩志阿斯訶備比古遅神、次に天之常立神。この二柱の神もみな独神と成りまして、身を隠したまひき。
上の件の五柱神は別天(ことあま)つ神。

 

とあり、この五柱の神は「別天つ神」である。「別」の字が「天つ神」を否定しており、この神々は丹波系である。
これらから、丹波系は「天つ神」でないことになり、丹波系は国つ神だとわかる。

前回、伊「久」米伊理毘古伊「佐」知命と呼ばれる垂任天皇の「久」と「佐」が丹波系を表すのではないかと述べた。

ヤマトタケルは開化天皇である(26)~矢河枝比売はやか・ハエ媛 - 「人の言うことを聞くべからず」+

で、安寧天皇の条に登場するハエイロネは意富夜麻登「久」邇阿礼比売命で、考元天皇の条の意富夜麻登「玖」邇阿礼比売命と違うことを述べた。
安寧天皇の条の安寧の子の師木津日子命の記述を抜粋しよう。

次に師木津日子命の子二王坐しき。一(ひとはしら)の子孫は、(伊賀の須知の稲置・那婆理の稲置・三野の稲置の祖。)一の子の和知都美命は、淡道の御井宮に坐しき。かれ、この王二(ふたはしら)の女ありき。兄の名は蠅伊呂泥、またの名は意富夜麻登久邇阿礼比売命。弟の名は蠅伊呂杼

 

とある。
「師木津日子命の子二王坐しき」と、始めに子の数を述べる記述は、『古事記』にはここにしかない。「一」をひとはしらと読ませるのもここだけである。
ならば意富夜麻登「久」邇阿礼比売命の「久」が出雲系を表すとも考えられるが、前回の疑問を考えれば、そのように結論することはできない。
鍵は、師木津日子命の子にある。
「一の子孫は」と書いて名前を省いたのは、名前を書いてはまずかったからだろう。
つまり意富夜麻登「玖」邇阿礼比売命とは、この名前の書かれなかった「一」の娘と考えられる。
考元天皇の条に戻れば、意富夜麻登「玖」邇阿礼比売命と書きながら、その子は夜麻登登母々曾毘売命、比古伊佐勢理毘古命など、丹波系の名前が目立つ。
そして比古伊佐勢理毘古命にも「佐」の字があり、「佐」が丹波系を表すとわかる。
この後に「この阿礼比売のの弟、蠅伊呂杼を娶して生みましし御子」として、若日子健吉備津日子命などの出雲系の名前の出ているのは、蠅伊呂泥、蠅伊呂杼が出雲系の名前で、意富夜麻登「玖」邇阿礼比売命とは、蠅伊呂泥の別名だからである。それを『古事記』は安寧天皇の条でフェイクを仕掛けて欺いて見せたのである。
こうして、「久」「佐」が丹波系を表す字だと結論づけられる。
まだ丹波系を表す字があり、それは今回登場した和知都美命にもある。次回はその説明をして、葛城之曾都毘古、その娘の石之日売の話に戻っていこう。


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