「人の言うことを聞くべからず」+

坂本晶と申します。はてなでは「坂本晶の『人の言うことを聞くべからず』」をやっています。こちらはサブブログとして、古代史、神話を中心に扱っていきます。『水瓶座の女』という小説を、太陽出版から販売しております。読んで頂けたら嬉しいです。

ヤマトタケルは開化天皇である(48)~『古事記での丹波、出雲の見分け方②

シリーズ第一回目から読みたい方はコチラ↓

sakamotoakiraf.hateblo.jp

更新のために書いている直前で気付いたことがあり、考えていたことが破綻したのだが、書けるところまで書こう。

カグツチの名前について、『古事記』の記述を見てみよう。

次に火之夜芸速男神を生みき、亦の名は火之炫毘古神(ひのかかびこのかみ)と謂ひ、亦の名は火之迦具土神と謂ふ。

 

このうち火之夜芸速男神、火之炫毘古神の名前は『古事記』では一度紹介するだけで、『書紀』では全く使われない。
しかし使われないからといって、『書紀』にこの二つの名前が反映されていないのではない。
火之炫毘古神は天津甕星、亦の名を天香香背男という名で登場する。
このように、『書紀』に登場しない『古事記』の名前も、少し名前が変わって登場している例は他にもある。

天津甕星については後回しにして、火之夜芸速男は何かが、この記事のテーマである。
イザナミカグツチの火で陰部を焼かれて死ぬ。
その後、カグツチイザナギに切られて死ぬが、その時の名前が迦具土神で、「火之迦具土神」でなくなっている。
その後の記述を見てみよう。
「ここにその御刀(みはかし)の前に箸(つ)ける血、ゆつ石村(いはむら)に箸ける血に走り就きて成りし神の名は、石折(いはさく)神、根折神、次に石筒之男神。(三神)次に御刀の元に箸ける血も、ゆつ石村に走り就きて成りし神の名は、甕速日神、次に樋速日神、次に健御雷男神、亦の名は健布都神、亦の名は豊布都神。(三神)次に御刀の手上に集まれる血、手俣より漏(く)き出でて成りし神の名は、闇於加美神、次に闇御津羽神。」
ここに出てくる樋速日神が重要である。
『書紀』では異伝第六に
『ついに腰にさげた長い剣を抜いて、軻遇突智を斬って三つに断たれた。その各々が神となった。また剣の刃からしたたる血が、天の安河のほとりにある沢山の岩群となった。これは経津主神の先祖である。また剣のつばからしたたる血がそそいで神となった。名づけて甕速日神という。次に熯速日神が生まれた。その甕速日神は、武甕鎚神の先祖である。または甕速日命、次に熯速日命、次に武甕鎚神が生まれたともいう。また剣の先からしたたる血がそそいで神となり、名づけて磐裂神という。次に根裂神次に磐筒男命が生まれた。あるものには磐筒男命と磐筒女命といっている。また剣の柄頭からしたたる血が、そそいで神となった。名づけて暗龗という。次に闇山祇(くらやまつみ)、次に闇罔象(くらみつは)が生まれた。」
熯速日の「熯」は火神を意味するが、樋速日は火神を意味しない。
だから丹波系は火神の家系であり、「迦具土神」である出雲系は太陽神の家系だが火神の家系ではない。
古事記』の「火之夜芸速男」が熯速日になったと、私は考えた。

しかし、問題が生じたのである。
『書紀』では本文にはカグツチの記述はなく、異伝第二、第四、第六、第七が軻遇突智、第三が火産霊、第五が「火神」、第八が「軻遇突智命」である。もっとも多く使われている「軻遇突智」を丹波系と考えた場合、火神の家系が火神を生むのは当然である。

古事記』を見ると、
「上の件の石折神より下、闇御津羽神より先、併せて八神は、御刀によりて生りし神なり。
とあり、
「かれ、斬りたまひし刀の名は天之尾羽張と謂ひ、亦の名は伊都之尾羽張と謂ふ。」
とある。生まれた神々は刀の子で、「迦具土神」の子ではない。

丹波系が火神の家系で、出雲系が太陽神の家系でも火神の家系ではないという私の考えは、間違っていない。
古事記』の大国主の国譲りには、天尾羽張神、その子の健御雷神が登場するが、天尾羽張神は「天之尾羽張神」でなく、健御雷神は「健御雷男神」ではない。
実はここに、『古事記』での丹波系と出雲系、もうひとつの見分け方が表れている。
「あめの~」という神が登場した時、「天之~」と表記するのが丹波系で「天~」と表記する場合は出雲系なのである。
他にも前回述べたスサノオとアマテラスの誓約に登場するアメノホヒも、最初は「天之菩卑命」と表記されながら、その後「天菩比命」と表記され、出雲国造の祖とある。現代まで続く出雲国造家の千家氏は出雲系である。
さらに言えば、天火明命は『古事記』では出雲系である。
火神や雷神も同様のようで、「之」が名前に入っていなければ、その神は出雲系なのである。

結論に入ろう。
ヒコホホデミは『古事記』では天都日高日子穂穂出見命とある。
天都日高日子穂穂出見命は丹波系だが、『書紀』で彦火火出見と表記された場合は出雲系なのである。
それでは『書紀』でなぜ、火神が火神を生むような記述になっているかだが、その理由は分かっている。
しかしこの問題は後回しにして、次回、石之日売の訂正をしよう。

メインブログ坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」もよろしくお願いします。