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「人の言うことを聞くべからず」+

坂本晶と申します。はてなでは「坂本晶の『人の言うことを聞くべからず』」をやっています。こちらはサブブログとして、古代史、神話を中心に扱っていきます。『水瓶座の女』という小説を、太陽出版から販売しております。読んで頂けたら嬉しいです。

ヤマトタケルは開化天皇である(45)=迷惑なヒコホホデミ

シリーズ第一回目から読みたい方はコチラ↓

sakamotoakiraf.hateblo.jp

ヒコホホデミが吉備品遅部雄鮒であり、目弱王であり、顕宗天皇であるというのが私の主張である。
今後、このヒコホホデミの話をしていくが、その前に、ヒコホホデミが丹波、出雲いずれの勢力の人物かをはっきりさせなければならない。
『海部氏系図』では天火明命の子にヒコホホデミがおり、また『書紀』には、

神日本磐余彦天皇の諱(ただのみな)は、彦火火出見という。

 

とあり、『書紀』の神武が長髄彦に勝利していることから、ヒコホホデミは丹波系の人物と見るべきだろう。
ヒコホホデミについて考える場合、気になることがある。
古事記』では、正勝吾勝勝速日天忍穂耳命は高御産巣日神の娘の萬幡豊秋津師比売命を娶り、天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸命を生んだとある。
『書紀』本文は、

正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊は、高皇産霊尊の娘の栲幡千千姫を娶られて、天津彦火瓊瓊杵尊を生まれた。

 

とある。
異伝第一。

すでに天照大神は、思兼神の妹、万幡豊秋津姫命を正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊に娶あわせ、妃として葦原中国に降らされた。

 

とある。万幡豊秋津姫命が思兼神の妹になっているが、高皇産霊尊の娘とは書かれていない。
異伝第二。

高皇産霊尊の娘の万幡姫を、天忍穂耳尊に娶あわせ妃として降らせられた。そこでその途中の大空におられたとき生まれた子を、天津彦火瓊瓊杵尊という。

 

とある。
異伝第六。

天忍穂命は高皇産霊尊の娘、栲幡千千姫万幡姫命、または高皇産霊尊の娘、火之戸幡姫の子、千千姫命というのを娶とられた。そして天火明命を生んだ。次に天津彦根火瓊瓊杵根尊を生んだ。その天火明命の子の天香山は、尾張連らの遠祖である。

 

ここで内容は大部変わる。一番変わるのは、オシホミミにあたる人物がタカミムスヒの娘でなく、孫を娶っていることである。
異伝第七。

高皇産霊尊の娘、天万栲幡千幡姫。一説では、高皇産霊尊の子、万幡姫の子玉依姫命。この神が天忍骨の妃となって、子の天之杵火火置瀬尊を生んだ。あるいは勝速日命の子、天大耳尊が丹クツ姫娶って、子の火瓊瓊杵尊を生んだという。或いは神皇産霊尊の女栲幡千幡姫が、子の火瓊瓊杵尊を生んだという。或いは天杵瀬尊は吾田津姫を娶って子の火明命を生み、次に火夜織命、次に彦火火出見尊を生んだと

 

一説の中にいくつもの説がある。注目すべきは天之火火置瀬尊と天杵瀬尊が同一かである。
同一でないとすれば、火明命と彦火火出見尊の父てある天杵瀬尊は丹波系の人物である。
また丹クツ姫は若日女と同一とされるニウツヒメを連想させるが、丹クツ姫を記述する以上同一ではないのだろう。
ニウツヒメが丹波、出雲どちらの神かも問題だが、丹クツ姫が火瓊瓊杵尊を生み、異伝第六の天火明命と天津彦根火瓊瓊杵根尊を生んだ千千姫と別であると考えるべきで、丹クツ姫、ニニギは出雲系の
神と考えるべきだろう。
異伝第八。

正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊は、高皇産霊の娘、天万杵栲幡千幡姫を娶り、子を生んだ。天照国照彦火明命と名づけた。これが尾張連らの遠祖である。次に天饒石国饒石天津彦火瓊瓊杵尊を生んだ。この神は大山祇神の娘、木花開耶姫を娶って、子を生ませた。火酢芹命と彦火火出見尊である。

 

栲幡千千姫、万幡豊秋津姫命、万幡姫、栲幡千千姫万幡姫命、火之戸幡姫、天万栲幡千幡姫、栲幡千幡姫、天万杵栲幡千幡姫で、「幡」の字のつく姫が八人いる。合わせて「八幡」である。
八幡と言えば応神天皇だが、八幡宮の宗本社の宇佐神宮応神天皇主祭神としながら、比売大神を中心とし、主祭神のようにしていることはよく知られている。
そして宇佐神宮でよく知られているのが、参拝の際に四柏手を打つことである。「四」は「死に通じる。呪いの所作である。この風習のあるのは他に出雲大社しかない。
そして異伝が進むほどに、「幡」の字がヒコホホデミから見て一世代離れた人物についていく点にも注目すべきである。
ヒコホホデミの分身である顕宗天皇には置目の逸話がある。
顕宗の父の市辺押歯王の遺骸を埋めた場所を置目という老婆が覚えていたというので、顕宗が置目に親しく接したという話である。
これだけなら大した話ではない。しかし聖徳太子の父の用明天皇の后妃を見ると、違う感想を持つ。

意富芸多志比売(おほぎたしひめ)を娶して生みましし御子、多米王。

 

と『古事記』にある。
きたしひめとは、用明天皇の母である。
聖徳太子天皇だった』で、渡辺康則は母子婚の可能性を否定しているが、このブログの読者はそう思わないだろう。
しかし問題は、「きたしひめ」ではなく「おほぎたしひめ」となっていることである。
『書紀』では欽明天皇蘇我系の妃は堅塩媛(きたしひめ)と小姉君で、二人は姉妹だが、『古事記』では小姉君は小兄比売となり、岐多志比売の伯母である。意富芸多志比売が小兄比売なら、用明は二世代上の女性と婚姻したことになる。

詳細は次回にするが、私はヒコホホデミはヤマトタケル=開化だと思っている。
今回ヒコホホデミの分身である顕宗、分身の可能性のある用明は、祖母もしくは曾祖母の代に当たる女性と婚姻したと、『記紀』が主張している可能性があるのである。
そしてヤマトタケル=開化の分身の大国主が、比売大神と同じ四柏手で祀られているのは、二神に婚姻関係があるという『記紀』の主張の可能性がある。この二神は、『記紀』編纂者にとって迷惑な存在なのである。
この疑問の解明には至っておらず、用明天皇については全くの手付かずである。
しかし、次回は顕宗と置目について語ろう。


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