「人の言うことを聞くべからず」+

坂本晶と申します。はてなでは「坂本晶の『人の言うことを聞くべからず』」をやっています。こちらはサブブログとして、古代史、神話を中心に扱っていきます。『水瓶座の女』という小説を、太陽出版から販売しております。読んで頂けたら嬉しいです。

ヤマトタケルは開化天皇である(43)~ホオリとヒコホホデミ

シリーズ第一回目から読みたい方はコチラ↓

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海幸山幸神話の主役の火遠理命(ホオリノミコト)は、『古事記』にでは亦の名を天津日高日子穂穂出見命(アマツヒコヒコホホデミノミコト)という。
神話では、釣り針を巡って兄の火照命と対立し、海神宮を訪れて釣り針を見つけ、海神の教えに従って火照命を苦しめて従える。
古事記』では、ホオリは火照命火須勢理命の弟である。
『書紀』本分では、長男が火闌降命、次男彦火火出見尊、三男が火明命となっている。
『書紀』では異伝により、兄弟の順と名前が変わっているが、注目すべきは吾田鹿葦津姫の子生みの異伝の第五である。

天孫が大山祇神の子、吾田鹿葦津姫を召され、一夜で孕まれた。そして四人の子を生んだ。そこで吾田鹿葦津姫は、子を抱いてやってきて言われるのに、「天神の子を、どうしてこっそり養うべきでしょうか。だから様子を申し上げて知って頂きます」という。このときに天孫は、その子等を見てあざわらっていわれた。「何とまあ私の皇子たち、こんなに生まれたとは本当に嬉しい」と。そこで吾田鹿葦津姫は怒っていわれた。「どうして私をあざけりなさるのか」と。天孫がいわれる。「心に疑わしく思う。だからあざけった。なぜなら、いくら天神の子でも、どうして一夜の中に、人を孕ませることができるのか。きっと我が子ではあるまい」と。このため吾田鹿葦津姫はますます恨んで、無戸室(うつむろ)を作ってその中にこもり、誓いの詞をたてて、「私の孕んだのがもし天神の子でなかったら、必ず焼け失せよ。もし天神の子ならば、損なわれることがないでしょう」と。そして火をつけて室を焼いた。その火が初め明るくなったとき、ふみ出して出てきた子は、自ら名乗って、「吾は天神の子、名は火明命である。わが父は何処におられるのか」と。次に火の盛んなときにふみ出して出てきた子は、また名乗りをして、「吾は天神の子、名は火進命、わが父と兄弟は何処におられるのか」と。次に火の衰えるときにふみ出して出てきた子は、また名乗りをして、「吾は天神の子、名は火折尊、わが父と兄弟たちは何処におられるか」と次に火熱が引けるときにふみ出して出てきた子は、また名乗りをして、「吾は天神の子、名は彦火火出見尊、わが父と兄弟らは何処におられるのか」と。

 

三人兄弟が四人になり、ホオリとヒコホホデミが別人になっている。
もうひとつ、火の中から出てきた子が、「わが父と兄弟は何処におられるのか」と叫ぶところに注目しよう。
子供達はなぜそう叫ぶのか?この中に父親のわからない子がいるからである。

古事記』ではホオリと火照命の争いとなっているが、『書紀』では火闌降命とホオリの対立となっている。
異伝で似たような話が続くのだが、注目すべきは海幸山幸神話の異伝第四である。


兄の火酢芹命は山の幸を得、弟の火折尊は、海の幸を得ていた。と。弟が憂え悲しんで海辺におられるとき、塩土老翁に会った。老翁が問うていうのに、「何故そんなに悲しまれるのですか」と。火折尊は答えていうのに、しかじか(兄の釣り針をなくしたこと)と。老翁は「悲しまれますな。私が計り事をしてあげましょう」と。そして計っていうのに、「海神の乗る駿馬は八尋鰐です。これがその
鰭を立てて橘の小戸のおります。私が彼と一緒になって計り事をしましょう」といって火折尊をつれて、供に行き鰐に出会った。鰐がいうのに、「私は八日の後に確かに天孫を海神の宮にお送りできます。しかしわが王の駿馬は一尋鰐です。これはきっと一日の中にお送りするでしょう。だから今、私が帰って彼を来させましょう彼に乗って海に入りなさい。海に入られたら、海中に自ずからよい小浜があるでしょう。その浜の通りに進まれたら、きっとわが王の宮につくでしょう。宮の門の井戸の上に、神聖な桂の木があります。その木の上に乗っていらっしゃい」と。言い終わってすぐ海中にはいって行った。そこで天孫は鰐のいった通りに、八日間待たれた。しばらくして一尋鰐がやってきた。それに乗って海中にはいった。すべて前の鰐の教えに従った。そのとき豊玉姫の侍者が、玉の碗をもって井戸の水を汲もうとすると、人影が水底に映っているのを見て、汲みとることができず、上を仰ぐと天孫の姿が見えた。それで中にはいって王につげていうのに、「私は、わが大王だけが、ひとりすぐれてうるわしいと思っていましたが、しかし今、一人の客を見ると、もっとすぐれています」と。海神が聞いて、「ためしに会ってみよう」といって、三つの床を設けて招き入れられた。そこで天孫は入口の床では、両足を拭かれた。次の床では両手をおさえられた。内の床では真床覆う衾の上に、ゆったりと座られた。海神はこれを見て、この人が天神の孫であることを知った。そしてますます尊敬した。云々と。(やってきた理由をたずね、それに答えた)海神が赤女や口女を呼んで尋ねられた。すると口女は口から針を出して奉った。赤女は赤鯛、口女は鯔である。
海神は針を彦火火出見尊に授け教えていわれるのに、「兄に針を返す時に天孫は、『あなたが生まれる子の末代まで、貧乏神の針、ますます小さく貧乏になる針』といいなさい。言い終わって三度唾を吐いて与えなさい。また兄が海で釣りをするときに、天孫は海辺におられて風招(かざおぎ)をしなさい。風招とは口をすぼめて息を吹き出すことです。そうすると私は沖つ風、辺つ風を立てて、速い波で溺れさせましょう」と。火折尊は帰ってきて、海神の教えの通りにした。兄の釣する日に、弟は、浜辺にいて、うそぶきをした。すると疾風が急に起こり、兄は溺れ苦しんだ。生きられそうもないので遥かに弟に救いを求めていうのに、「お前は長い間海原で暮らしたから、きっと何かよいワザを知っているだろう。どうか助けてくれ。私を助けてくれたら、私の生む子の末代まで、あなたの住居の垣のあたりを離れず、俳優(わざおぎ)の民になろう」と。そこで弟は嘯くことをやめて、風もまた止んだ。

 

ずいぶん長い文に付き合ってもらった。
この文の全てを分かっているわけではないが、理解の鍵はある。
後半の文が「兄」と「弟」になっている。一体「兄」が誰で、「弟」が誰なのか?
「火折尊は帰ってきて、海神の教えの通りにした」とあるが、海神に教えを受けたのは彦火火出見尊である。海幸山幸神話が海幸彦が山幸彦に負ける物語なら、この異伝で海幸彦であるホオリが兄で、吾田鹿葦津姫の子生みの異伝第五に登場したヒコホホデミが弟である。
ヒコホホデミは父親のわからない子で、ホオリとは別人で、ホオリに勝った者である。
以降、ホオリとヒコホホデミを中心に記事を進めていくが、次回はこの話を一旦置いて、訂正を入れる。


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