「人の言うことを聞くべからず」+

坂本晶と申します。はてなでは「坂本晶の『人の言うことを聞くべからず』」をやっています。こちらはサブブログとして、古代史、神話を中心に扱っていきます。『水瓶座の女』という小説を、太陽出版から販売しております。読んで頂けたら嬉しいです。

ヤマトタケルは開化天皇である(41)~「佐耶岐」と大雀太子

シリーズ第一回目から読みたい方はコチラ↓

sakamotoakiraf.hateblo.jp

古事記応神天皇条で、応神天皇が子の大山守命と大雀命(仁徳)に訪ねる場面がある。

ここに天皇、大山守命と大雀命に問ひて詔りたまはく、「汝等は、兄の子と弟の子と孰(いづ)れか愛(は)しき」とのりたまひき。天皇この問を発したまひし所以は、守遅能和紀郎子に天下治らさしむの心ありつればなり。ここに大山守命、「兄の子ぞ愛しき」と白(まを)したまひき。次に大雀命は、天皇の問ひ賜ひし大御情を知らして白(まを)したまはく、「兄の子は既に人と成りぬれば、これいぶせきこと無きを、弟の子は未だ人とならねば、これぞ愛しき」とまをしたまひき。
ここに天皇詔りたまはく、「佐耶岐(さざき)、吾君(あぎ)の言ぞ我が思ふが如くなる」とのりたまひて、即ち詔り別けたまはく、「大山守命は山海の政せよ。大雀命は食国の政を執りて白したまへ。宇遅能和紀郎子は、天津日継を知らしめせ」とのりたまひき。かれ、大雀命は天皇の命に違ひたまふことなかりき。

 

仁徳は応神の命に従って、皇位を求めなかったと記述されている。
ところが、この後髪長比売のところになると、仁徳は大雀太子と呼ばれている。宇遅能和紀郎子が皇太子になったはずなのにである。

ヤマトタケルは開化天皇である(40)~訂正①・石之日売の正体 - 「人の言うことを聞くべからず」+

で、宇遅能和紀郎子が仁徳だと述べたが、『古事記』で「佐耶岐」と呼ばれたのが宇遅能和紀郎子で、この時宇遅能和紀郎子は、大雀命と習合したと解釈できる。
もっとも、宇遅能和紀郎子の「宇」が「守」になっている。
これが誤記でないなら、「守」遅能和紀郎子は大山守である。大山守が「佐耶岐」と呼ばれ、大雀である仁徳と合わさったとも解釈できる。
どちらにせよ、今回この大雀命について訂正するつもりだったが、ひと月の間に考えが戻ってしまった。

ヤマトタケルは開化天皇である(32)~「大鷦鷯」はミソサザイ、「大雀」はすずめ - 「人の言うことを聞くべからず」+

で「雀は雀」と述べたが、「佐耶岐」が「雀」を指すと一度考え直した。しかし今は「雀」は元々「雀」であり、鷦鷯ではないと思っているので、今回訂正はない。

これだと話が短いので、次回するつもりだった話をしよう。
古事記』では、謀反を起こした速総別と女鳥王を、山部大盾が殺す。
その際、山部大盾は女鳥王の手の玉釧(たまくしろ)を取って自分の妻に与えた。しかし後に豊楽(とよのあかり、新嘗祭の後の酒宴)の時に、山部大盾の妻はその玉釧を身に付けて出席した。そこで山部大盾が女鳥王の玉釧を奪ったのがばれ、石之日売は山部大盾を殺した。
『書記』では話が変わっている。隼別と雌鳥皇女を追ったのは、吉備品遅部雄鮒(きびのほむちべのおふな)と播磨佐伯値阿餓能胡(はりまのさえきのあたいあがのこ)である。

伊勢の蒋代野(こもしろの)で殺した。雄鮒らはそのとき、皇女の玉を探して裳の中から見つけた。二人の王の屍を廬杵河のほとりに埋めて復命した。皇后は雄鮒らに問わせて、「皇女の玉を見なかっただろうね」と問われ、「見ませんでした」答えた。
この年、新嘗祭のの月に、宴会があったとき、酒を内外の命婦に賜わった。近江の山の君稚守山の妻と、采女磐坂媛の二人の女の手に、良い珠をまいていた。皇后がその珠を見られると、雌鳥皇女の珠に似ていた。疑いをもたれて役人に検べさせると、「佐伯値阿餓能胡の妻の玉です」と答えた。阿餓能胡を責め調べると、「皇女を殺した日に探って取りました」と述べた。阿餓能胡を殺そうとされたが、代わりに自分の土地を差し出して死罪を償いたいと申し上げた。その土地を納めて死罪を許された。それでその土地を名づけて玉代(たまて)といった。

 

雌鳥皇女の玉を取ったのは吉備品遅部雄鮒である。それなのに佐伯値阿餓能胡が責められるのはおかしい。

ヤマトタケルは開化天皇である(34)~鹿と猪とモズ - 「人の言うことを聞くべからず」+

のように、また佐伯に濡れ衣が着せられた。
そしてこの皇后とは矢田皇女である。石之日売は山部大盾を許さなかったが、矢田皇女は(濡れ衣としても)佐伯値阿餓能胡を許した。
気になるのは、磐坂媛と吉備品遅部雄鮒である。「磐坂」は磐坂市辺押磐皇子の磐坂に通じ、「品遅部」は垂仁天皇の子のホムチワケに通じる。
佐伯値阿餓能胡は、吉備品遅部雄鮒がいなければ隼別を殺せなかった。次回、吉備品遅部雄鮒に該当する人物を追っていこう。

メインブログ坂本晶の「人の言うことを聞くべからず」もよろしくお願いします。