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「人の言うことを聞くべからず」+

坂本晶と申します。はてなでは「坂本晶の『人の言うことを聞くべからず』」をやっています。こちらはサブブログとして、古代史、神話を中心に扱っていきます。『水瓶座の女』という小説を、太陽出版から販売しております。読んで頂けたら嬉しいです。

ヤマトタケルは開化天皇である(37)~ニギハヤヒ、ヤソタケル、クマソタケル

シリーズ第一回目から読みたい方はコチラ↓

sakamotoakiraf.hateblo.jp

ニギハヤヒ天火明命は同一だとも、違うとも言われる。
私の見る限り、祖神を天火明命とする氏族が尾張系、つまり丹波系で、ニギハヤヒを祖神とする氏族が物部系、つまり出雲系である。
古事記』では、

邇芸速日命、登美毘古が妹登美夜毘売を娶して生みし子、宇麻志麻遅命

 

とある。
同母の異性の兄弟の名前の共通は、近親婚の暗示である。しかしトミビコとトミヤビメでは、名前が完全に共通していない。近親婚でない可能性がある。
『書紀』では、長髄彦の妹の三炊屋媛を娶って可美真手命(ウマシマデノミコト)を生んだとある。
ここで三炊屋媛の「媛」表記に注意するべきだろう。「媛」表記の女性は丹波系である。しかし長髄彦は前回述べたように、出雲系のはずである。だからこの兄妹の関係は嘘である。
系図の改竄は力関係によってできる。力の弱い出雲系は、基本的に丹波系の人物を自分達の系図に取り入れられない。
しかし『古事記』で登トミビコとトミヤビメが兄妹になっているのはどうか?トミビコは本当は神武を討った丹波系の人物なので、トミヤビメは出雲系である。
トミビコとトミヤビメの関係を、近親婚に見せかけている点に注意しよう。この関係がニギハヤヒに反映されている。
『書紀』ではニギハヤヒが神武に降伏し、使えたとある。
しかし『千代旧事本紀』では、ニギハヤヒは早くに死に、ウマシマデが大和国を治めているところに神武東征があって降伏する筋書きになっている。
そして『古事記』では、ニギハヤヒは大和にいない。神武東征の終わった後、天下りして神武に仕えるが、降伏したわけではない。
戸矢学の『ニギハヤヒ』によると、全国のウマシマジ(ウマシマデ)を祀る神社は60社あるが、その中でニギハヤヒを祀る神社は16社しかないという。
つまりニギハヤヒは出雲系に見えても、やはり実態は丹波系で、出雲系が丹波系から借りたような存在なのである。目上からの借り物だから、扱いに慎重になる。

海部氏系図では、「登美屋彦の妹登美屋姫を娶る」
とある。トミヤヒコとトミヤビメだから、これは兄妹婚の暗示である。トミヤヒコは出雲系だとわかるので、この婚姻が初めにできた神話で、これを『古事記』がトミビコの妹トミヤビメを娶った話にし、『書紀』が『古事記』を元に、トミビコとトミヤビメを長髄彦と三炊屋媛の話に変えたのではないかと思われる。

次に、ヤソタケルの話である。
前回述べたように、神武東征以外にもヤソタケルは登場する。
登場するのは『景行紀』である。『書紀』では、ヤマトタケルの熊曾征討の前に、景行天皇熊襲を征伐する。


天皇は群卿に詔して、「聞くところによると、襲の国に厚鹿文(あつかや)、乍鹿文(さかや)という者がおり、この二人は熊襲の強勇の者で手下が多い。これを熊襲の八十梟帥といっている。」

 

とあり、ヤソタケルが二人いることになっている。次に、

一人の臣が進み出ていった。「熊襲梟帥に二人の娘があります。姉を市乾鹿文(いちふかや)といい、妹を市鹿文(いちかや)といいます。容姿端麗で気性も雄々しい者です。沢山の贈物をして手下に入れるのがよいでしょう。梟帥の様子をうかがわせて、不意を突けば、敵を破ることもできましょう」と。

 

と、「熊襲の八十梟帥」が「熊襲梟帥」になっている。「熊襲梟帥」が「熊襲の八十梟帥」をつづめたものともとれるが、厚鹿文と乍鹿文のどちらが熊襲梟帥かわからない。
景行は市乾鹿文と市鹿文を味方に引き入れ、市乾鹿文を召して偽り寵愛する。市乾鹿文は父の弓の弦を切り、従兵に熊襲梟帥を殺させる。
景行は市乾鹿文の不孝を憎み、市乾鹿文を殺させる。

『景行紀』はこのくだりは、ヤソタケルとクマソタケルを習合させるためのものである。つまり厚鹿文と乍鹿文のどちらかが丹波系としてのヤソタケルであり、どちらかがクマソタケルである。
そしてここで、ひとつの仮説が生じてくる。それは、出雲、丹波のどちらかの人物が女性に殺されている可能性があるということである。そして『書紀』は、その人物は丹波系ではないと主張している。次回、その可能性を見ていこう。


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