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「人の言うことを聞くべからず」+

坂本晶と申します。はてなでは「坂本晶の『人の言うことを聞くべからず』」をやっています。こちらはサブブログとして、古代史、神話を中心に扱っていきます。『水瓶座の女』という小説を、太陽出版から販売しております。読んで頂けたら嬉しいです。

ヤマトタケルは開化天皇である(27)~稲田宮主とクシナダ姫の深層

シリーズ第一回目から読みたい方はコチラ↓

sakamotoakiraf.hateblo.jp

スサノオクシナダ姫の婚姻についての話は、既に以前紹介した。今回はテナヅチアシナヅチクシナダ姫の名前、スサノオクシナダ姫の子、子孫を中心に見ていこう。
まず『書紀』本文。
クシナダ姫は奇稲田姫となっており、脚摩乳(アシナヅチ)、手摩乳(テナヅチ)は「わが子の宮の首長(つかさ)」、稲田宮主神とスサノオに呼ばれている。そしてその子は大己貴神である。その子孫については書かれていない。
異伝第一。
クシナダ姫は稲田姫となっており、その親は稲田宮主の簀狭之八箇耳となっている。『古事記』ではアシナヅチは須賀之八耳となっているのに、『書紀』ではスサノヤツミミである。そしてスサノオの子、子孫は、

稲田姫をごらんになり、妻屋を建てて生んだ子を、清の湯山主、名は狭漏彦八嶋篠とつけた、あるいは清の繋名坂(ゆいなさか)軽彦八嶋手命という。また清の湯山主、名は狭漏彦八嶋野という。この神の五代の孫は大国主神である。

 

とある。
異伝第二では、スサノオ葦原中国に降臨した時、クシナダ姫はまだ生まれていない。生まれていないので、スサノオクシナダ姫に求婚していない。そしてテナヅチは脚摩手摩(アシナヅテナヅ)アシナヅチは稲田宮の主、簀狭之八箇耳となっている。
スサノオヤマタノオロチを退治した後、

稲田宮主、簀狭之八箇耳が生んだ子、真髪触(まかみふる)奇稲田媛を、出雲国の簸の川のほとりに移しすえて育てた。後に素戔嗚尊が妃とされて、生ませられた六代の孫を、大己貴命という。

 

とある。
異伝第三。

素戔嗚尊が、奇稲田媛を妃に欲しいといわれた。脚摩乳、手摩乳が答えていうのに、「どうかあの大蛇を殺して、それから召されたらよいでしょう」

 

とあり、この後ヤマタノオロチが退治されるが、スサノオクシナダ姫の婚姻、子や子孫のことは書かれていない。
この後の異伝には、スサノオクシナダ姫の婚姻の話はない。それでは謎解きをしていこう。
まず『書紀』本文、テナヅチアシナヅチが「わが子の宮の首長」で、二人で稲田宮主だから、『書紀』の主張はアシナヅチは稲田宮主ではないである。
次に異伝三から見ていこう。よく見ると、クシナダ姫とテナヅチアシナヅチが親子だとは書かれていない。
同じ話の繰り返しだから省略したともとれるが、『書紀』の場合、これだけのことでも注意する必要がある。そのうち明らかにしていくが、『書紀』は『古事記』に比べて、主張の隠蔽の度合いが強く、引っかけが多い。その引っかけを見抜くのが、『書紀』を読むコツである。
異伝二では、脚摩手摩と稲田宮の主簀狭之八箇耳の間に、まだ子供は生まれていない。スサノオヤマタノオロチを退治した後に、稲田宮主簀狭之八箇耳の子、真髪触奇稲田媛が生まれ、スサノオと結ばれる。
表記に注意しよう。
本文 奇稲田姫
異伝一 稲田姫
異伝二 真髪触奇稲田媛
異伝三 奇稲田媛
本文、異伝一が「姫」表記で、異伝二、三が「媛」表記である。本文、異伝一のクシナダ姫は同一だが、異伝二、三のクシナダ姫とは違うのである。

ヤマトタケルは開化天皇である④~『日本書紀』は『古事記』を解体する - 「人の言うことを聞くべからず」+

で、

古事記』と本文を会わせながら、異説の羅列により『古事記』のメッセージを解体し、解体したうえで自分達の主張を述べている。

 

と述べたが、『書紀』が『古事記』のメッセージを解体した後に出てくるのが『書紀』の主張ならば、本文と異伝一のクシナダ「姫」は出雲系であり、異伝二、三のクシナダ「媛」が丹波系である。
しかしそう見ると、異論も出てくる。本文には「稲田宮主」とあり、異伝一には「稲田宮の主簀狭之八箇耳」とある。これは異伝二の「稲田宮主簀狭之八箇耳」と同じではないか、と。
違うのである。丹波系のクシナダ「媛」の母は、「稲田宮主簀狭之八箇耳」のみであり、「稲田宮主」や「稲田宮の主簀狭之八箇耳」は出雲系なのである。
しかしまだ問題がある。本文ではスサノオクシナダ姫の間に生まれたのが大己貴神とあり、異伝二では「生ませられた六代の孫を、大己貴命という。」とある。ならば本文と異伝二のクシナダ姫は同一ではないか、と。
これも違う。

ヤマトタケルは開化天皇である⑱~ヤマトタケルは大国主である - 「人の言うことを聞くべからず」+

で見たように、スサノオの五代の孫に天之葺根がおり、天之葺根は出雲系に丹波系の人物を挿入する存在だった。
というより、、五代目で出雲と丹波が入れ替わる暗示と言っていい。
異伝一では、、六代の孫が大国主になっている。厳密には、大己貴と大国主も違うのである。大国主とは丹波系の大国の主である。また異伝一では、スサノオクシナダ姫の間の子に三つの名前があるが、この名前のどれかが丹波系の人物で、どれかが出雲系の人物である。この名前を特定できれば、、異伝二のスサノオの子の名前もわかるのだが、、現状では私の手に余ることである。
そして異伝一のクシナダ姫が稲田姫となっているのは、奇稲田「媛」こそが丹波の媛であり、奇稲田「姫」が詐称であることを示している。
稲田二の真髪触奇稲田媛について、かつて私は髪長姫を思わせると述べたが、髪長姫と奇稲田媛が同一とは限らない。しかし同一とするのが『書紀』の主張なのだろう。次回は髪長姫を見ていこう。


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